「経営戦略としてのマーケティング」 クボタの事例から学ぶ、B2B製造業が直面する課題への突破口

戦略 グローバル Top Runners
「経営戦略としてのマーケティング」 クボタの事例から学ぶ、B2B製造業が直面する課題への突破口

「マーケティングそのものが経営戦略」
クボタ精密機器事業の事例に学ぶ、グローバル案件創出の勝ち筋

グローバル市場で新規案件をどう創出するか──多くのB2B製造業が直面するこの課題に対し、経営戦略とマーケティングを一体化させ、着実に成果を上げている事業部門があります。それが、株式会社クボタの精密機器事業ユニットです。

Top Runners 今回は、「どこで、どう勝つか」を起点にした戦略設計のもと、LinkedInを活用した海外案件創出や代理店戦略によって事業成長を実現している同ユニットを率いる斉木英樹氏に、庭山がインタビューした内容を紹介いたします。

STPこそ経営戦略の中心。「マーケティングそのものが経営戦略」という信念

クボタの精密機器事業ユニットでは、重量式フィーダをはじめとする産業用精密機器を製造し、売上の約8割を海外が占めています。その事業成長を牽引しているのが、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)を経営戦略の中心に据えた独自のアプローチです。日本企業ではSTPを定義しても投資判断や営業の優先順位にまで落とし込めていないケースが少なくありません。しかし斉木氏は、STPに基づく考え方をそのまま事業計画へ反映し、製品投資や営業活動の優先順位づけの起点としていると語ります。

“バリュープロポジションについては、2022年に子会社化したドイツのブラベンダーテクノロジー社と共同開発中の製品があります。彼らが従来得意としてきた一品一様のカスタムオーダーは、当社にとって大きな強みです。これらのことからも、まさにマーケティングそのものが経営戦略になっています。”
(お客様インタビューから抜粋)

受注目標から逆算し、LinkedInでインド市場の新規リード1,938件を創出

戦略を描くだけでなく、実行の仕組みづくりにも同ユニットの特長があります。2021年にデジタルマーケティングを本格化した背景には、「フィールドセールスだけでは新規市場開拓に限界がある」という明確な課題認識がありました。世界中に点在する見込み顧客すべてを訪問して回ることは、物理的にもコスト的にも不可能です。そこで注目したのが、インドにおけるLinkedInの活用でした。

受注目標から逆算して必要なリード母数を算出したところ、当時の保有数では大幅に不足していることが判明。そこでLinkedInを戦略的に活用し、最終的に1,938件の新規リード獲得と複数の受注につなげています。

海外事業の競争優位は「代理店」。戦略を共に実行するパートナーの存在

もう一つ、同ユニットの海外事業を支えているのが代理店戦略です。斉木氏は「設備投資型のB2Bビジネスで、かつ意思決定プロセスが複雑な海外市場においては、代理店を軸にした戦略でなければ成果は出にくい」と断言します。

“海外の顧客は、現地の言葉で探知できる人から物を買いたいと思っています。当社の製品は設備投資が前提となるため、顧客との信頼関係が不可欠です。誰が意思決定者なのか、どの企業が影響力を持っているのか、重要な商談がどこで動いているのか。これらは現地に根付いていなければ見えません。”
(お客様インタビューから抜粋)

代理店との定期的な戦略会議でマーケット情報の共有から案件の優先順位づけまでを一体で管理し、コロナ禍で日本から営業担当が出張できなかった時期にも代理店の力で売上を伸ばしたというエピソードは、この戦略の有効性を如実に物語っています。庭山も「代理店を『販売チャネル』ではなく、『戦略を共に実行する存在』として位置づけている点が、グローバルで成果を出せている大きな要因」と評価しています。

最後に斉木氏は、今後の展望として「2030年にフィーダの分野でグローバルに認知されるリーディングカンパニーになる」というビジョンを掲げたうえで、SFAの導入やパイプライン管理の高度化、PRM(パートナーリレーションシップマネジメント)の進化を次のステップとして見据えていると語ります。経営戦略とマーケティングを一体化させ、デジタルと代理店の両輪で海外市場を攻略するクボタ精密機器事業ユニットの取り組みは、グローバル展開を目指すB2B製造業にとって大変参考になる事例です。
この機会にぜひ、このインタビュー記事をご覧ください。