マーケティング戦略を構築し、デマンドジェネレーションやABM(アカウントベースドマーケティング)を成功させるためには、DoV(Definition of Value:価値の定義)とICP(Ideal Customer Profile:理想的な顧客プロファイル)の適切な設計が不可欠です。これら2つの要素は、「鍵と鍵穴」のように深く結びついており、互いに補完し合うことでマーケティング活動の成功を導きます。
マーケティングのスタートはDoVを議論し明確に定義すること
DoV(Definition of Value)は、「価値の定義」または「再定義」を意味します。具体的には、自社の製品やサービスが顧客にどのような価値を提供するのか、顧客は何に価値を見いだして自社を選んでくれているのか、を明確にすることです。この価値は単なる製品の機能や価格競争力に留まらず、顧客の課題を解決し、競合との差別化を図るための「独自の価値提案」でなければなりません。
そして、DoVを実施するときに重要なことは、「俯瞰的な視座」で議論することです。開発者も営業もマーケティングも自社の製品・サービスに関しては当事者です。これを「アリの目」と表現します。このアリの目だけでは客観的な顧客目線や競合比較を理解する事は出来ません。そこで俯瞰的な目、つまり「トリの目」が必要になります。DoVのディスカッションに第三者を入れることをお勧めするのはこれが理由です。最近もあるお客様とお客様が設定したDoVに対しての「壁打ち」を行い、ミーティングを通してエッジを立てました。
DoVの議論が不十分または、明確に定義できずにSTPを実施すると、何に困っている集団をターゲットセグメントに選ぶべきか判らず、その結果、ポジショニングも定まらず、展示会の選定やWebやパンフレットの制作にもどこを基準に制作するべきか判らなくなってしまいます。マーケティングを実施する際に「基準」となるターゲットセグメントが曖昧なままマーケティングが実行されてしまいます。戦略の間違いは戦術ではカバーできませんので、結果として思ったような成果が出せない、ということになります。DoVは企業にとって「戦略の出発点」であり、ここを明確に定義することは欠かせないプロセスなのです。
DoVとICPそしてABMの関係
ICP(Ideal Customer Profil)とは「理想的な顧客プロファイル」として、自社の製品やサービスまた事業全体にとって、非常に親和性の高い理想的な顧客企業を定義するための概念です。「理想的」という言葉がポイントで、単に規模が大きい企業や購入金額が多い企業を対象とするのではなく、自社の価値と最も高い親和性を持ち、その関係が長期的に続く可能性が高い企業を指す言葉です。これを定義し、的確にアプローチすることにより、LTV(顧客生涯価値)を最大化することが可能となります。つまりABM(アカウントベースドマーケティング)を実現できるのです。
例えば、製品やサービスが最も親和性の高い企業像を言語化し、どの業種、規模、部署で、どのような課題を抱える顧客が、自社のソリューションによって最も大きな価値を得られるかを具体化します。
ICPを定義する際には、単なるデータ分析や過去の購買履歴に頼るのではなく、「科学と感性のバランス」を用いて、顧客の未来の可能性を想像する力(イマジネーション)が求められます。
DoVとICPの関係を一言で表現すると、「鍵と鍵穴の関係」に例えられます。この例えが示すのは、DoVが「鍵」、ICPが「鍵穴」という役割を持ち、両者がぴったりと合致することで初めて価値が発揮されるということです。
ICPは、自社のDoVが最も効果的に働く顧客を定義するものです。逆に言えば、DoVが定義されていなければ、どの「鍵穴」に焦点を当てれば良いのかが分からなくなります。つまりDoVを定義し、それを求めているICPを定義し、その間を埋めるプランを考察することがマーケティングのプランニングなのです。このように、DoVとICPは相互依存的な関係にあり、どちらが欠けてもマーケティング戦略は成立しません。そして、ABMにおいてはICPの中から、ターゲットアカウントを選定します。
ABMにおいては、価値の定義(DoV)を顧客視点で具体化し、理想的な顧客プロファイル(ICP)を精緻化し、ICPの中から、ターゲットアカウントを選定するという、戦略的な設計プロセスを徹底することで、より効果的なABMの実践が可能となるでしょう。