Forrester Research社主催「B2B Summit North America」視察報告

グローバル Column
Forrester Research社主催「B2B Summit North America」視察報告

先日、B2Bマーケティングカンファレンスの最高峰とも言えるForrester Research社主催の「B2B Summit」に今年も参加してきました。3月31日~4月3日にアリゾナ州フェニックスで開催された今年の「B2B Summit North America」には、世界中から2千数百人ものマーケターが集結。熱気に満ち溢れた会場で米国ハイテクのリセッションとAIが織り成す最新トレンドを肌で感じることができ、とても刺激的でした。
そこで今回は、このカンファレンスで私が特に注目、実感した世界のトレンドの3つを詳しく解説します。

1. MQA:Buying Groupとインテントデータ

長年B2BマーケティングのスタンダードであったMQL(Marketing Qualified Lead)に「Goodbye」を告げ、新たに注目されているのが「Buying Group:バインググループ」という概念です。これは、購買の意思決定に関わる集団に着目するもので、企業全体をターゲットとするABM(Account Based Marketing)と親和性が高い考え方なのです。

Forrester Research社によると、バインググループに焦点を当てたマーケティング戦略は、既存顧客からの案件創出を10~20%増加させ、これまで見えなかった潜在顧客からの案件を5~15%増加させる効果があるとのことです。さらに、営業生産性を20~50%向上させるという驚くべきデータも示されました。

バインググループの概念が浸透するにつれて、「シグナルベースドマーケティング」という言葉もセッション内で頻度高く登場しました。これは、バインググループに属するMAには未だ登録されていないアノニマスである個々のメンバーの行動シグナルを捉え、よりパーソナライズされたアプローチを行うためのものです。現在では、このシグナルベースドマーケティングが進化し、「MQA(Marketing Qualified Account)」という、企業全体をスコアリングする考え方が主流になりつつあります。

2. Dialog:全てを覆うAI

B2B Summitの会場はまさにAI一色でした。AIは、B2Bマーケティングのあらゆる領域に浸透し、その進化は目覚ましいものがあります。特に注目すべきは、AIによるDialogつまり対話の進化です。検索とは異なり、AIは顧客との対話を通じてニーズを深く理解し、よりパーソナライズされた情報を提供することができるのです。

さらに衝撃的だったのは、AIチャットボットがまるで人間のように顧客と対話するデモンストレーションです。そのチャットボットは、特定の人物の過去の発言や文章を学習し、その人物とそっくりの口調(癖)や声で24時間365日、それも20カ国語で顧客対応を行うことができます。まさに「スーパーヒューマン」と呼ぶにふさわしい存在です。

一方で、AI技術の進化は、既存のマーケティングツールにも大きな影響を与えています。例えば、かつては革新的だったAIメール作成ツールも、今では当たり前の存在となりつつあります。AIは、もはや特別なものではなく、B2Bマーケティングの基盤となるテクノロジーとして、その地位を確立しつつあるのです。

3. Adapt:チェンジを挟んで

激動の時代において、企業が生き残るためには「Adapt(適応)」することが不可欠です。Forrester Research社は、「フレキシブルな計画を作るのではなく、適応性のある指示で人間をフレキシブルに使う」と提唱しています。これは、変化に柔軟に対応できる組織と人材を育成することの重要性を示唆しています。

Forrester Research社の調査によると、アメリカ企業の従業員1人当たりの年間計画変更数は、2016年から2022年の間で5倍に増加しています。まさに朝令暮改で激動の時代を乗り切ろうというもので、変化のスピードが加速していることを如実に物語っています。チャールズ・ダーウィンの言葉を借りれば、「もっとも強い者が生き残るのではなく、もっとも賢いものが生き残るのでもない。もっとも変化に適応できる者が生き残る」ということです。

しかし、多くの日本企業は、変化への適応が遅れているのが現状です。組織を変革するためには、従業員一人ひとりが変化を望むことが重要です。そして、限られたリソースの中で成長と変化を実現するためには、企業全体で適応性のある成長戦略を策定する必要があるのです。
最終セッションで、GEを率いて20世紀最高のCEOと言われたジャック・ウェルチの
「社外の変化率が社内の変化率より早いとしたら終わりは近い」という言葉が紹介されました。多くの日本企業のトップマネジメントに聞いてほしい言葉です。

まとめ:DoVとICPの重要性と日本のB2Bマーケティングへの提言

今回のカンファレンスを通じて、私が改めて確信したのは、「DoV(Differential Value:自社が提供できる価値)」と「ICP(Ideal Customer Profile:理想的な顧客像)」の重要性です。DoVとICPは、鍵と鍵穴の関係にあり、両者を同時に定義することで、自社の価値を最大限に発揮できる顧客を見つけることができるのです。

日本のB2Bマーケティングは、世界に比べて遅れている部分も多くあります。しかし、ここで知見を活かし、DoVとICPを明確化し、AIを積極的に活用し、変化に柔軟に対応できる組織を構築することで、日本のB2Bマーケティングは更なる発展を遂げることができると確信しています。その一助となれるよう、私も精いっぱいのお手伝いをしていきます。

今回、私が参加した「B2B Summit North America」の特別報告セミナーを開催します。
このコラムでは紹介できなかった、私が誰と会って、どんな話をしたか、会場の様子などたくさん撮ってきた画像をお見せしながらレポートしています。ぜひ私のレポート、セミナーをお聞きください。新たな発見、次の一手が見えてくると思います。

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