今すぐ、3Sを見直そう! 2025年版 下期に取り組むべきB2Bマーケティング

戦略 組織・ナレッジ Column
今すぐ、3Sを見直そう! 2025年版 下期に取り組むべきB2Bマーケティング

多くの企業が下半期に入り、営業&マーケティング活動が活発になっています。
来期に向けた準備に入る企業から、

「来年こそは、マーケティングで目に見える成果を出したい」

とご相談をいただいています。
3年~5年前に新たにマーケティング組織を作り、MAを導入し、SEOや展示会出展などを実施しているものの、それらに消費した費用に対して説明出来るような成果が出せていない、証明出来ない、という顧客に対して、私がしているアドバイスの多くは、【3Sの見直し】です。
AIの進化がありえないほどに加速し、マーケティングキャリア40年の私ですら感じたことがないほどの環境変化が起きています。激変する環境に適応するためには、本質的で抜本的な改善が必要なのです。

3Sとは

3Sは、「Strategy(戦略)」、「Structure(組織)」、「System(システム)」の頭文字をとったフレームです。
アンゾフマトリックスで有名なロシア生まれの米国の経済学者イゴール・アンゾフ博士が提唱した、成功のための意思決定プロセスです。
実はマーケティングのご相談の背景が、「部分最適により成果が出ない」である場合、その原因は「3S」の理解がないまま予算や人的資源を投資したことです。

戦略(Strategy) 目的の定義と自由度を与えない

  • 目的が定義されているか?
  • 戦略があるか、戦略に自由度を与えていないか?

ほとんどの企業には経営戦略があります。特に中堅以上の企業には「中期経営計画」と呼ばれる明文化された経営戦略が存在し、具体的な数値や伸ばすべき事業、製品・サービスなどが明記されています。この経営戦略は実現可能性を高めるためにより専門性の高いサブ戦略を必要とします。人事戦略、財務戦略、営業戦略、技術戦略、IT戦略などですが、その中でも中期経営計画に記載されている数字目標の達成に最も重要なサブ戦略がマーケティング戦略です。CMO(Chief Marketing Officer)の最も重要な仕事はこのマーケティング戦略を書き上げ、経営陣の承認を受け、組織に浸透させることです。

日本企業にCMOが存在しないことによる最大の損失は、このマーケティング戦略が存在しないことです。現代マーケティングは専門性の高いフレームワークやテクノロジーから成り立っています。マーケティングの専門知識や経験が無ければ書き上げることは出来ません。特に重要なのは経験値で、これを持たないで知識だけで書き上げたものは多くの場合、社内で浸透させることは出来ませんし、その実施で営業などの他部門と衝突を起こします。

しかし、戦略を持たないということは「基準」が無いということです。基準が無ければそれぞれが自分なりの感性で仕事をすることになります。出展する展示会の選定、Webのデザイン、セミナーの集客方法やそれによって集められた参加者の所属企業や部署などのプロファイル・・・。こうしたものに「整合性が無い」と感じたことはありませんか?基準が無ければ全体最適にはなれないのです。小学校の時に整列する際に最前列の人が手を上げて、その人を基準に「前へならえ」をして整列します。基準が無ければ列を作ることも出来ません。今の多くの日本企業はその状態なのです。

さらに、戦略の間違いは戦術ではカバーできません。日本企業は戦略で間違って、それを現場の戦術で修正しようともがいています。それが不可能なことは古来から実証されています。だからこそ、戦略に修正の余地はないか?経営戦略としっかりリンクしているか、を経営陣と協議し、経営戦略が修正されたら直ちにマーケティング戦略も修正することが必要なのです。

組織(Structure)

  • その組織は、戦略のために稼働しているか?
  • 組織の質と量は十分か?

「事業部制の父」と呼ばれる、アルフレッド・チャンドラーは著書「組織は戦略に従う」の中で、事業戦略が先であり、その戦略を実現するために十分な質と量を備えた組織が必要であると提唱しました。つまり、どのような組織を作ってどんなスキルを持った人材を何人くらい揃えるのかは戦略を基準に考えなければなりません。

その「基準」としてのマーケティング戦略を持たない日本企業の組織は多くの場合、量も質もまったく適切ではありません。人数は充足していても、質すなわち「遂行すべきマーケティングに必要な専門スキル」がまったく足りていません。成果が出るはずが無いのです。

弊社はマーケティングスキルを測定し、偏差値でレポートするサービスを持っています。そのB2Bマーケティング偏差値で見ると、偏差値が50以下のマーケティングチームで成果が出ている企業はありません。逆に、営業やものづくりのマーケティング偏差値が60近くにあり、マーケティング部門の偏差値が65を越えている場合は経営陣の期待を越える成果を出しています。
組織は戦略に従いますが、成果はナレッジに導かれるのです。

システム(System)

  • MAはメール配信しかしていないか?
  • 戦略と組織に見合ったシステムか?

戦略と組織が定義されていれば、何を実現したいのかという「戦略」と、誰が実施するのかという「組織」が要件定義となり、システムが最適かどうかのチェックを行います。不適切ならリプレイスまたはチューニングを行います。

つまり、基準となる戦略や使う組織や人が定義出来なければ、どんな素晴らしいシステムを導入したところで役には立たないのです。

MAを導入してうまく機能していない割にコストが掛かるという理由でリプレイスを検討する企業が増えていますが、何をさせたかったのですか?と質問すると、現行のシステムの選定が間違っていなかったというケースも少なくないのです。MAを導入した企業は日本に20,000社を超えていると言われています。しかしその多くはメール配信機能しか使っていません。極論すればMAが普及して増えたのは案件ではなく「スパムメール」という悲しい現実が我々の目の前に横たわっています。
だから今、私はもう一度「3S」を提唱しています。

3Sについて、詳しく知りたい方は、
儲けの科学第7章、導入したMAがメール配信にしか使われない理由を参照ください。