Customer Buying Behavior(顧客の購買行動)の変化は止められない。今、優先すべきは、Business Process Transformation(ビジネスプロセス変革) <前編>

戦略 グローバル Column
Customer Buying Behavior(顧客の購買行動)の変化は止められない。今、優先すべきは、Business Process Transformation(ビジネスプロセス変革) <前編>

先日、当社のアドバイザーである、Steve Gershikと「激しく移り変わるB2Bマーケティング」について議論しました。その中で、議論した【Customer Buying Behavior】と【Business Process Transformation】について我々から観た環境変化について考察してみます。

B2B顧客の購買行動の変化と加速する進化

まず、欧米やアジアのカンファレンスでは話題の中心になっている【Customer Buying Behavior】について解説しましょう。

ダイレクトマーケティングから派生したデータベースマーケティングを源流に持つB2Bマーケティングは、紙のダイレクトメールから電子メール、SNSへとコミュニケーションチャネルを進化させて発展してきました。その過程で、タグやHTMLフォーマットなどを使いながら顧客の行動(Behavior)をトレース出来るようになりました。
そうしたテクノロジーを背景にした進化の中で見えてきたことは、顧客は売り手がデザインした購買プロセス(カスタマージャニー)をたどることはめったに無く、エンタープライズB2Bや高額商材においては購買プロセスはさらに複雑になるという事実でした。

展示会やSEOなどのマーケティング活動を起点にして接点をもった個人(リード)が、どのように購買プロセスをたどるのかを個人をベースにトレースすればするほど、ある事実が明確になってきます。それは、購買プロセスには複数の部署や役職から成る人々が関与しており、最初に接点を持った人が最終購買担当者や意思決定者になることの方がレアであるということです。そのため、個人ではなく購買プロセスに関わる集団を【Buying Group】として捕捉しようという考え方が主流になりつつあります。

そして、Webやデジタルコンテンツが溢れ、情報収集の手段が多様化した現代では、B2Bビジネスの購買担当者は自分たちのペースで情報収集や比較検討を進め、購買プロセスが70%にまで達するまでは、売り手と関わることを拒むとも言われています。つまり、営業担当者とコンタクトを始めるときには、すでに購買プロセスの70%まで進んでいるのです。ということは、この段階でリーチしてもすでに手遅れで、顧客の選定候補から外れていることになります。
販売する側がリストを作ってせっせと電話をしても、本人が出てくれる「到達率」が激減している理由のひとつがこれなのです。もちろんCovid-19でテレワークが進んだことも理由ではありますが、そもそも知らない相手と電話で話すというコミュニケーションは購買側がタイミングを決めたいことであり、だからこそデジタルコンテンツを使った情報収集やテキストコミュニケーションが中心となりつつあります。そしてこれは、スマホを持っていてもほとんど電話機能を使わない世代への交代によりさらに加速しています。

これは弊社がコールドコールを推奨しない理由でもあります。

Web基点でのデジタルマーケティングも大きな転換期にあります。検索エンジン(Google)由来の自然(オーガニック)流入が激減しているからです。これはB2Bの専門性を持つ【Buying Group】の人々が検索ではなくAIを活用して情報収集をするようになったためです。
サーチエンジンに最適化(SEO)するのではなく、ジェネレーティブAIに最適化(GEO)したWeb設計やコンテンツ制作が必要な時代なのです。
ただ問題は、サーチエンジンは実質Googleの独占状態でしたから、Googleのアルゴリズムに最適化していれば良かったですが、ジェネレーティブAIは数多くのブランドがあり、技術革新の真っ最中です。どれに最適化すれば良いのか判らないのです。

人と人とのコミュニケーションには同期と非同期が存在します。対面や電話など同じ時間に複数の人を拘束しなければ成立しないのが【同期】で、手紙や電子メール、SNSなどの同時で無くても成立するのが【非同期】です。
飛び込み営業や、電話などの【同期コミュニケ―ション】がビジネスの主戦場だった頃は、電話でアプローチしてアポイントを獲得し、営業が商談を開始し、何度かの訪問を重ねて信頼関係を構築し、クロージングする。顧客となってからもアカウントセールスが定期的に訪問し、御用聞きスタイルで引き合いをもらうということが普通でした。
しかし、今の急速に変化する中でこのやり方ではアポイントも取れず、ビジネスチャンスを逃し、商談の扉がしまってから駆けつけるという機会損失ばかりが増えていきます。

デジタルを中心とした非同期コミュニケーションを中心にマーケティング&セールスを再設計しなければ、顧客からの多様な購買シグナルをキャッチすることはできないのです。