Customer Buying Behavior(顧客の購買行動)の変化は止められない。今、優先すべきは、Business Process Transformation(ビジネスプロセス変革) <後編>

戦略 グローバル Column
Customer Buying Behavior(顧客の購買行動)の変化は止められない。今、優先すべきは、Business Process Transformation(ビジネスプロセス変革) <後編>

先日、当社のアドバイザーである、Steve Gershikと「激しく移り変わるB2Bマーケティング」について議論しました。その中で、議論した【Customer Buying Behavior】と【Business Process Transformation】について我々から観た環境変化について考察してみます。

ビジネスプロセス変革は待ったなし

顧客のマーケティング部門とチームを組んでマーケティングを実施してきた我々は、コミュニケーションが原因でクレームを引き起こし、ひいては営業部門に迷惑をかけることの罪深さを何度も経験しています。しつこいメールや、相手にまったく関係無いコンテンツへのクレームはマーケティングにではなく、担当している営業に来るものです。

「あのメールマガジン何とかならない?」
「私に関係無い内容をどんどん送られても困るよ」
「配信停止の手続きが複雑で腹が立ったよ」

そんな顧客の言葉から始まる商談は最悪ですから、当然営業からマーケティングにクレームが入ります。そうした積み重ねが、マーケティングと営業の溝をどんどん拡げていくものです。

そこで我々はB2Bマーケティングで使われるコミュニケーションチャネルを顧客に嫌われる順に整理してみました。使ったのは【同期・非同期】という基準です。
もっとも同期性が高いコミュニケーションはリアルでの対面です。4人でミーティングをするなら4人の人間が同じ時間に同じ場所にいなければなりません。拘束性が強くかつ原価も高くなります。Web会議は場所はどこでも構いませんが、同様に同じ時間に参加者を拘束します。電話も場所は問いませんが同じ時間に複数の人間を拘束するという意味では極めて同期性が高いチャネルです。

非同期とは、相手の時間や物理的な場所を問わないチャネルです。紙のダイレクトメール、カタログ、電子メール、オウンドメディア、SNSなどがこれに該当します。これらは読まずに捨てることも出来るし、時間がある時に読むことも出来ます。忙しいビジネスパーソンは移動中にメールを読んでいます。

そして同期性の高いコミュニケーションチャネルは相手の時間を拘束するが故にクレーム率が高いのです。リアルのミーティングやWeb会議の場合はあらかじめテーマも目的も決まっていますからまだ良いのですが、コールドコールと言われるアポイントを目的としたコールは一方的な上に同期性が高いのでクレーム率が高く、また直接クレーム化しなくても、二度と電話に出ないという実質的オプトアウトをされてしまいます。実は私の会社にも「取り次がない企業リスト」が存在し、それはどんどん長くなっています。

人は誰でも売り込まれる事が嫌いです。何かを購入するにしても自分のペースで情報を収集し、比較し、自分が信頼する人やチャネルで確認して決定したいのです。だから売り込みのコールは取り次がれなくなり、売り込みコンテンツ一色のメールマガジンはオープン率もクリック率も際限なく下がり、飛び込み訪問は企業へのクレームになります。

この結果、顧客は営業とコンタクトするときには購買プロセスの70%、つまり情報収集や比較などを済ませていると言われていますし、それまでは営業と会いたがらない、と言われています。

このように購買行動が急速に変化する中で、売り手の販売プロセスもその変化に適応しなければなりません。市場に背を向ければ「退場」の道しか残されていないのです。相手の時間を拘束し、高い原価が発生する同期コミュニケーションは貴重な機会です。有効に大切に使わなければなりません。

そもそもすべてを同期コミュニケーションにする必要などまったく無いのです。

人が片っ端から電話を掛けてアポイントを取り、そこに営業を訪問させるやり方はすでに終焉を迎えています。
では、総てが非同期に、デジタルになるかと言えばそれも違うのです。特にエンタープライズB2Bの購買プロセスは、デジタルだけですべてが完結することはありません。ラスト1マイルは誠実で、商材の知識と豊富な経験を持ち、口が堅く信頼される営業が絶対に必要なのです。

現代のエンタープライズB2B企業はこのマーケティングと営業、デジタルと人間、同期と非同期を組み合わせて設計しなければなりません。だから連携(アラインメント)が大切なのです。

Business Process Transformationとは、顧客のCustomer Buying Behaviorの変化を理解し、その環境にあわせてTransformationすることなのです。業務アプリケーションを導入したりリプレースすることではありません。それらは手段のひとつに過ぎず、目的は市場の変化に対応して進化することなのです。

AIの活用が当たり前になった今、変化の速度は加速しています。それに合わせて適応しなければなりません。マーケティングと営業がいがみ合っている場合ではないのです。

新しい環境下で、自社は顧客とのコミュニケーションをどう設計すべきか?その中で、マーケティングと営業は、それぞれ何をしなければならないのかを戦略的に設計し直す必要があります。これまでのように、マーケティングはMQLをつくり、営業にそれを渡して商談をドライブしてもらう、というやり方だけでは、商談を作ることも出来なくなっています。

B2Bビジネスをとりまく環境変化を正しく理解し、自社はどのように変革するべきか、ぜひ、皆さんと議論していきたいと思います。