ビジネス環境のグローバル化と競争の激化により、企業のマーケティング戦略はより高度化・複雑化しており、それを社内に理解・浸透させることが課題となっています。
今回のTop Runnersは、日立グループの人材育成を担う日立アカデミー様への事例インタビューを通じて、日本を代表する巨大企業グループが、世界規模で事業を展開するために採用している「学び」の考え方について紹介します。
マーケティングが「営業の技術」から「社会人の基本素養」へ
マーケティングというと営業部門に近い領域という認識が強かったように感じますが、日立アカデミー様の視点は違っていました。マーケティングを「営業職だけでなく、エンジニアやコンサルタントなど、さまざまな職種に求められる社会人の基本素養」として捉えていたのです。
グローバル競争時代において、自社の商品・サービスを深く理解し、顧客の課題に最適な提案をするスキルは、職種を問わず必須となっています。この認識の転換が、企業全体のマーケティング力向上、ひいては企業の競争力強化につながるのではないでしょうか。
“以前からマーケティングに関する基本的な研修は提供していました。しかし、日立グループ全体で「Lumada成長モデル」を推進、および世界をフィールドとして戦っていくためには、より戦略的なマーケティングが求められるようになりました。
特にB2Bマーケティングにおいては、単なる商品・サービスの販売ではなく、顧客の課題を深く理解して最適な提案を行うスキルが必要です。このようなニーズの高まりを受けて、新たなマーケティング手法を学ぶ機会が求められていたのです。”
(お客様事例から抜粋)
日本企業が海外で競争力を高めるには、グローバルスタンダードの手法を取り入れることも必要です。ABM戦略はまさにその典型例と言えます。米国などでは広く普及していますが、日本ではまだ浸透段階。そのギャップを埋めるべく、日立グループは組織的な取り組みを始めたわけです。この積極的な姿勢は、日本企業の国際競争力向上のモデルケースになるかもしれません。
予想を超える反響と高い満足度
グループ内でB2Bマーケティング強化の機運を高めるために開催したのは2023年10月のグループ向け勉強会。ここには実に350名が参加し、実践的な質問が多数寄せられました。この反応からも、こうした先進的なマーケティング手法への関心の高さがうかがえます。
こうした背景を追い風に、グループ向けABM特別プログラムの研修企画が進み、勉強会から10カ月後には研修がスタート。受講後のアンケートでは、満足度評価が5段階中4.8と高評価でした。「実務で活かせるスキル」「具体的なケーススタディがわかりやすい」といった声が多く聞かれたようで、すでにいくつかのビジネスユニットではABMの本格導入検討も始まっているとのこと。研修が実際のビジネス変革につながっていく好循環が生まれ始めている点が大変興味深いです。
“ABMは、海外では一般的に活用されていますよね。日立グループもグローバル市場で競争力を維持するために、この手法の導入が必要だと判断したのです。そうして、ABMに特化した研修プログラムの開発を決定しました。”
(お客様事例から抜粋)
今後の課題は「知識」から「実践」へのシフト
「個人が研修で学んだことを組織にどう還元するか」「ABM戦略がマッチする部署とそうでない部署がある」など、研修効果を組織で展開することへの懸念は、多くの企業様で共通する課題ではないでしょうか。特に、研修を受講するのは個人だが、マーケティングは組織全体の課題であるという、日立アカデミー様のご指摘は本質を突いています。
“研修受講者が実際にABMを業務に活かし、成果を出せるような環境を作ることが、私たちの最終的な目標です。今後も受講者のフィードバックを取り入れながら、より実践的な研修へと進化させていきたいですね。”
(お客様事例から抜粋)
本事例では、日立アカデミー様が日立グループ全体の競争力の底上げ、成長に、「学び」を入り口にどう体系立てるべきかといった、日々の奮闘ぶりを詳しくご紹介しています。