日本を代表する大手総合電機メーカー、三菱電機株式会社。その傘下には200社を超えるグループ企業が名を連ねています。そんな巨大組織の三菱電機グループでは、2010年代初頭からデジタル領域への本格的な取り組みを開始し、2018年からは体系的な社内教育プログラム「デジタルマーケターキャンプ」を立ち上げました。
今回のTop Runnersは、その開発・運営の中心を担う宣伝部デジタルコミュニケーショングループ主任・粕谷俊彦氏に弊社代表の庭山との対談インタビューした模様を紹介します。
社内リテラシー向上への第一歩
2010年代初頭、三菱電機社内ではウェブサイトの重要性はまだ十分に認識されていませんでした。しかし、時代の流れとともにウェブ関連の相談や問い合わせが急増。現場からの声は多岐にわたったことから、課題解決のため、まずFAQの整備やイントラネットによる情報共有から着手していったそうです。
“例えば、「ウェブサイトの立ち上げにはどのくらいの費用がかかるのか」といった基本的な質問から「SEOの最適化をどのように進めるべきか」といった高度な相談まで、内容は非常に幅広いものでした。その対応に追われる中で、社内全体のリテラシーを向上させることが急務であると強く感じたのです。(中略)「いかに効率よく現場の課題に応えるか」という観点が中心でしたが、やがてより体系的な教育の必要性を感じ、社内向けプログラムの導入を検討することになりました。”
(対談記事から抜粋)
ウェビナー形式の導入と教育プログラムの進化
2018年ごろから、ウェビナー形式による社内教育が一般化し始めた流れを受け、三菱電機グループ内でもUX(ユーザーエクスペリエンス)に焦点を当てたプログラムを開始します。デザイナーだけでなく、非デザイナーの社員にもデザイン思考を根付かせ、組織力を強化することが狙いだったと、粕谷氏は語ります。
“しかし、プログラムの設計段階で、「いきなり高度なUX教育を行うのはハードルが高すぎる」という意見が出てきました。そこで足元の課題である「ウェブサイト制作」にフォーカスした基礎的な内容からスタートすることにしました。これが「WEBMASTER CAMP」の誕生です。このプログラムは、当初900以上ある世界中の三菱電機グループのウェブサイト担当者向けの教育プログラムとして、UXやカスタマージャーニーマップの作成、オリエンテーションの進め方など、実務に直結したスキルを学べる内容を中心にしました。”
(対談記事から抜粋)
コロナ禍と「デジタルマーケターキャンプ」への進化
2020年、コロナ禍による環境の激変が起こり、デジタルマーケティングの重要性が飛躍的に高まります。オフラインの催事が軒並み中止となる中、オンラインでのリード獲得が急務となり、これを契機に、従来の教育プログラムをさらに発展させ、デジタルマーケティング全般を体系的に学べる「デジタルマーケターキャンプ」が誕生します。
“これまでに累積600名以上が受講しています。マーケティングの担当者だけではなく、現場の営業担当者なども参加している点が特徴です。「市場の変動が激しい中で、顧客ニーズに対応するための知識を身につけたい」というニーズが一定数あるようです。”
(対談記事から抜粋)
宣伝部主導による全社的な教育のユニークさ
三菱電機の特徴的な点は、宣伝部内のデジタルコミュニケーショングループが全社のデジタルマーケティング教育を主導していることではないでしょうか。多くの日本企業が事業部や経営企画主導でマーケティング部門を立ち上げている中、このアプローチは非常にユニークです。
“当社の宣伝部も今後はブランディング強化に取り組んでいくと思いますが、デジタルコミュニケーショングループは情報システム部門も兼ねているため、これから先も全社のウェブサイト管理・運用に携わっていくことになると思います。ですからデジタルマーケターキャンプのような取り組みは今後も継続していくことになるでしょうし、他にもデジタルマーケティングを強化できる機能を、全社に提供していきたいですね。”
(対談記事から抜粋)
三菱電機グループの人材育成の取り組みは、デジタル時代における大企業の変革モデルの一つとして、そして顧客のニーズに迅速かつ柔軟な対応を求められる多くのB2B企業にとっても参考になるはずです。この機会にぜひ、この対談記事をご覧ください。