新規事業への挑戦―化学メーカーにおける「両利きの経営」とB2Bマーケティング革新

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新規事業への挑戦―化学メーカーにおける「両利きの経営」とB2Bマーケティング革新

近年、化学品市場は成熟化が進み、これまで主力だった基盤事業だけでは企業の持続的成長が難しくなっています。こうした状況の中、三洋化成工業様は「両利きの経営」を全社方針に掲げ、強みの界面活性剤ビジネスをはじめ既存事業の深耕と並行して、新規事業の探索、そのための人材育成にも力を入れることになりました。
Top Runners今回は、保守的な社風からの脱却を図りながら、技術の多角的な展開と新たな収益源の確立を目指した三洋化成工業様のインタビュー内容をご紹介します。

フラボトーン事業の位置づけとマーケティング体制

新規事業の象徴的な例は「FlavoTone(フラボトーン)」の展開です。この製品は、複雑かつ多様な「匂い」を可視化できる匂いセンサーという、従来のケミカルビジネスとは異なる分野への挑戦ということもあり、社内でもかなり注目を集め、その動向を特に上層部では注視していたそうです。
フラボトーン事業は、全く新しい分野であり、従来の技術の延長ではなく、ゼロベースでの市場開拓が求められるプロジェクトでした。事業部は約20名規模で、もともと技術職中心だった組織に、現在は一部メンバーがマーケティングやセールスも兼務。要素技術の開発は一段落して、これからは環境分野など多様なマーケットでのユーザー発掘や、課題解決型の提案活動へとシフトしています。

“当社としても、中期経営計画を基にした新たな成長軌道として、新規事業の開拓に一定のリソースを掛けてきています。複数の新規事業テーマがある中で、この匂いセンサーがかなり有望になってきました。”
(お客様事例から抜粋)

また、フラボトーンは既存事業のお客様とのクロスセル(複数商材の同時提案)にも活用可能で、マーケティング素材としての伸びしろも大いに期待されていました。従来の「B2B=営業主導」の発想から、製品特性や顧客ニーズを見極めるマーケティング主導型への転換が、事業化の成否を左右する局面に入っています。

日本企業ならではのB2Bマーケティングの課題と診断サービスの活用

三洋化成工業様では、マーケティングの概念自体が希薄だった過去を振り返りつつ、B2B領域でのマーケティング力強化の必要性を強く実感していました。従来は「営業=マーケティング」と捉えていた社内風土も、化粧品原料事業を皮切りに徐々に変化していきます。特に弊社のセミナーをはじめ、B2Bマーケティングスキルアセスメント、Webサイト診断・コンテンツ診断といったサービスの活用が、客観的な課題把握や意識改革の起爆剤となっていたようです。

“フラボトーンのホームページは当社で作っているのですが、それには効果があるのかを見てもらおうと診断を受けました。(中略)コンテンツや更新頻度の少なさという点は、元々庭山さんのセミナーでもよく聞いていて、できていないと思っていました。診断結果の報告会には、実務に携わっている若いメンバーにも出てもらいましたが、それを客観的に社外の方から伝えてもらえたので、メンバーもずいぶん感激というか、なるほどと思ったようでしたね。”
(お客様事例から抜粋)

マーケティング推進による新規市場開拓と今後の展望

今後のマーケティング活動について、三洋化成では「一方通行の情報発信」から「顧客ごとにカスタマイズしたコンテンツ発信」への進化を模索されています。生成AIなどの最新技術も活用しながら、より高度なマーケティング手法を取り入れていく計画です。
同社は約3,000種類もの製品を、多様な産業分野に展開しているため、従来の商社や代理店任せの販売スタイルから脱却し、「自らマーケティングを主導して新規市場を開拓する」体制強化が急務と認識。これまでの経験や外部支援で得た知見を活かし、社内の意識改革と業務プロセスの変革に本格的に乗り出しています。

本事例では、新規事業創出とB2Bマーケティング強化の取り組み、成熟市場下で持続的成長を目指す営業やものづくり、マーケティング部門にとって、ひとつのロールモデルとなります。この機会にぜひご覧ください。