2026年B2Bマーケティング 庭山流プレディクション

戦略 グローバル 組織・ナレッジ Column
2026年B2Bマーケティング 庭山流プレディクション

明けましておめでとうございます。
本年もシンフォニーマーケティングをどうぞよろしくお願いいたします。

2026年、最初のコラムは『今年、B2Bマーケティングがどうなっていくのか』について、私なりの予測を共有する内容で幕を開けたいと思います。

予想を超える激動期

昨年、このコラムで「40年以上のB2Bマーケティングキャリアで、出会ったことがないくらいの激動期になる」と予測を書きましたが、2025年はその予測をも超える激動になりました。米国ではこの2年で職を失ったマーケティングとカスタマーサクセスの数は10万人をはるかに超えると言われています。つい先頃も、SaaS系ITの代表格として世界をリードしていたSalesforceがカスタマーサポート部門を4,000人解雇してAIに切り替えるとアナウンスしました。
買収された企業、解散したマーケティングサービス会社、業態を変えた企業、そして開催を見送られたカンファレンスなど数え上げたらきりがない程の変化が起きています。
この原因はいくつかの要素が絡み合っていますので、コロナ(COVID-19)のような一過性のものではありませんがハッキリ言えることは、エンタープライズB2Bの購買サイドの行動が変わってしまったのです。これを解説しましょう。

営業に会いたくないバイインググループ

米国のアナリストファームから発表された複数のリサーチデータがはっきり示しているのは、エンタープライズB2Bのバイインググループの多くは、選定プロセスの70%程度までは「営業に会いたくない」と考えている事です。
情報収集や評価では従来の営業を呼んで説明を聞くスタイルから、Webの記事や動画を観て比較・検討するのです。
製品評価でも、ECサイトでサンプルを入手し、それで評価し比較するようになりました。これは若いエンジニア層では昔からあった慣習ですが、そのエンジニア層が今やバイインググループの中核を担っています。

参考コラム
Customer Buying Behavior(顧客の購買行動)の変化は止められない。今、優先すべきは、Business Process Transformation(ビジネスプロセス変革) <前編>
Customer Buying Behavior(顧客の購買行動)の変化は止められない。今、優先すべきは、Business Process Transformation(ビジネスプロセス変革) <後編>

検索由来のオーガニックのWeb流入が減少の一途

何かを調べる時に検索していた行動が、AIとの対話を通して情報収集するスタイルへと急激に変化し、これは戻ることはないだろうと言われています。そこでSEO(サーチエンジンオプティマイゼーション)からGAO(ジェネレーティブAIオプティマイゼーション)、LLMO(ラージランゲージモデルオプティマイゼーション)という言葉が出てきました。しかしこれは言うほど簡単ではありません。SEOの場合、最適化すべき検索エンジンは実質的にはグーグル一択です。最適化すべきアルゴリズムはひとつでした。しかしジェネレーティブAIやLLMはいったいいくつあるでしょうか?同じブランドでも異なるバージョンが存在し、恐らく異なるアルゴリズムで動いています。つまり2026年の段階では最適化する対象を絞ることがとても難しいのです。

電話が繋がらない世界

この10年、世界中のB2Bマーケティング関係で最も増えたのはインサイドセールスと呼ばれるコール関連のスタッフでしょう。ADR、BDR、SDRなど呼び方はさまざまですが要するに電話でコミュニケーションする人々で、しかもカスタマーサクセスやヘルプデスクと違って、多くはこちらから掛ける(架電する)人たちです。
社内でこの部門を新設する企業が増え、さらにこれをサービス提供する会社も急速に増えました。つまりコールスタッフのトータルの数が毎年激増したのです。この結果、営業電話の数が急激に増えました。
「営業電話」は基本的に嫌われます。ビジネスパーソンにとって最も重要なリソースである「時間」を奪うからです。エンタープライズB2Bの場合、掛けた電話を最初に取る人は多くの場合は話したい人ではありません。そこで掛けた電話の数を分母に、話したい相手と話せた数を「到達」と定義しています。この到達率が急激に下がっています。これは代表電話に掛ける場合の「代表突破率」もですが、名刺の電話番号に掛ける電話も本人に繋がらなくなっているのです。多くは「席を外しています」と言われますが明らかに「居留守」です。
もう営業電話に出たくないという人がどんどん増えているのです。
この傾向は欧州が強く、次いでAPACのシンガポールやシドニーが顕著でしたが、日本でも同じ現象になっています。世界的に見ると米国のIT産業だけが僅かに到達しやすい、と言われていますが、他の地域では到達率は減少の一途です。

商談単価の高いエンタープライズB2Bは、ラストワンマイルは営業パーソンの世界です。直販営業であろうと、販売代理店の営業であろうと、それは同じです。そのために過去20年間はマーケティング部門のミッションは営業に良質の案件を供給することであり、それは「アポイント」または「訪問承諾」の形で供給されていました。
その設計を大きく変えなくてはいけない状況になっているのです。

では2026年のマーケティングはどう設計すべきなのか?
私は2つの方向でナレッジを磨くべきだと考えています。

1. ファーストパーティへの原点回帰

営業の名刺交換、セミナーやウェビナーへの参加者、展示会での収集データなど、社内に在るパーミッションの取れたデータを「ファーストパーティデータ」と呼びます。
これに最適化したマーケティング戦略を構築すべきです。宝の山の上から双眼鏡で遠くの宝を探すのはもうやめて、双眼鏡をスコップに持ち替えて足元を掘りましょう。そこには想像を絶する宝が眠っています。

2. シグナルベースドマーケティング

バイインググループが情報収集のタイミングで発するシグナルをバイイングシグナルと言います。インテントデータのベースになるシグナルです。これを見逃さずに発見出来る仕組みの構築が重要になります。この手法にはデジタルの理解だけで無く、法体系への理解が必要です。日本の個人情報保護法や特定電子メール法は個人情報を保護するための法律です。企業単位で管理されるIPアドレスは対象外です。これも活用を考えるべき情報なのです。

変化はチャンスでもあります。マーケティング先進国から大きく遅れてしまった日本のエンタープライズB2Bのマーケティングが世界に追いつくチャンスでもあると私は考えています。そのためには一にも二にも「ナレッジ」が必要です。それも特定の個人ではなく、集団としてのナレッジを押し上げる必要があります。
それが、シンフォニーマーケティングが研修事業に本気で取り組んでいる理由でもあるのです。
マーケティングとは市場とのコミュニケーションであり、マーケターは市場の変化を感知するセンサーの役割も担っています。「購買行動の変化」「ジェネレーティブAIの急激な進化」「マーケティング組織の変化と進化」などから目をそらさず、情報を経営層にレポートしなければなりません。
この激動の時代こそ、マーケティングの重要性は高まり、マーケターが活躍すべきなのです。

2026年新春 シンフォニーの森より

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