衆議院選挙2026 選挙に想うコト:B2Bマーケティングの視座

庭山 一郎
衆議院選挙2026 選挙に想うコト:B2Bマーケティングの視座

「知名度」を分解すると

2026年2月8日に衆議院選挙が終わりました。結果はご存じの通り、政権与党の歴史的な大勝利でした。私はここで政治を語るつもりはありません。あくまでもマーケティングの専門家としての視座から気になる事を書こうと思います。
選挙の直前に立憲民主党と公明党が新たな新党「中道改革連合(以下中道)」を作り、両党の衆議院議員が新党に移籍して選挙に臨みました。結果は大惨敗でした。落選した候補者がその敗戦の弁で

「新党の知名度を上げる時間が足りなかった」
「新党の考え方を理解していただくには時間が無かった」

と説明していました。
実はこれは多くのB2B企業が説明する「売れない理由」の勘違いとよく似ています。

知らないから買わないのか、知っていて買わないのか、良く知っていてそれでも買わないのか、では購買行動がまったく異なり、それに応じてマーケティングの「打ち手」もまったく違うものになります。
買ってくれない原因が「知らないから」であれば、知っていただく戦術を展開することが正しい対応になるでしょう。無論、「誰に」「何を」「どうやって」伝えるか工夫が必要ですが、これらはマーケティングで解決すべき課題であり、解決可能な課題です。

つまり、中道の候補者たちが議席を失った理由が、彼らが説明するように「知名度が低かったから」、「知らない政党名だから」ならば、知っていただく努力が正しい課題解決になります。
しかし、小選挙区は政党ではなく候補者個人に投票します。しかも議席を失った中道の大物議員は過去にその選挙区で当選を重ねた人たちで、中には19回も当選している人までいます。その選挙区の有権者で知らない人はいないレベルの知名度を持つ候補者なのです。彼らにとって所属する新しい政党名が浸透しないことはほとんど関係無いはずです。
これは、「良く知っていて買わない」ケースなのです。

マーケティングは魔法の杖ではない

実はこの「良く知っていて買わない」ケースは多くの場合、マーケティングではどうすることも出来ません。顧客が現在選択している競合製品が持っている重要な機能を自社製品は持っていない、前線の営業の専門知識やサポート体制が競合と比較して格段に違う、また同一スペックでありながら価格競争力がまったく無いなどのケースでは、いくらマーケティング活動で案件を作って営業に供給しても最後にこれらの理由で負けてしまうからです。

そのような場合は、「STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)」で今の製品・サービスのスペックや価格のままで勝てる違う市場を探すか、もしその市場に留まるなら、勝てる価値を付加するしかありません。
これは「PMF(プロダクトマーケットフィット)」と呼ばれます。製品やサービスを市場のニーズに合わせて磨き上げる、改良・改善する、コストダウンを工夫して価格競争力をつけるなどはもちろんですが、サードパーティを含む他の商材やサービスを組み合わせて新たな価値を創造することも重要です。

B2Bはプロとプロの世界です。顧客が良く知っていて選択しない商材の売れない原因を「認知度が低いから」と誤解して宣伝広告費にいくら予算をつぎ込んでも、売れるようにはならないのです。