ツールの誕生にはしっかりとした理論がある
日本でもすっかり普及したMA(Marketing Automation)。その選定の段階で「TOFU」や「MOFU」という言葉を耳にしたことはないですか?TOFUはTop of Funnelの略で、MOFUはMiddle of Funnelの略になります。つまりTOFUは「Funnel(漏斗)」の上である見込み客データの獲得(リードジェネレーション)を得意とし、MOFUはFunnelの中間のリードナーチャリングやスコアリングを得意としているという事を意味しています。
日本でもそうですが、社歴の長い規模の大きな企業の内部には過去の営業活動で蓄積された顧客・見込み客・過去客の膨大なデータが集積されていて、それを整理して活用する(リードナーチャリング)方が重要となります。それに対して、スタートアップや小規模企業の内部にはそうしたデータが充分に存在することは希ですから、Web広告やSNSを活用してリードジェネレーションから始めることになります。すなわちMAを選定するということは、機能と自社が行うべきマーケティング活動のマッチングなのです。
では「Funnel」とは何でしょう?これは2020年にForresterの傘下に入ったSiriusDecisonsが提唱したDemand WaterfallのFunnelなのです。2001年にGartnerのマーケティングのトップだったジョン・ネーサンが同僚のリッチと設立したSiriusDecisonsはその後の20年間世界のB2Bマーケティングを理論的に牽引しました。その彼らが2006年に発表したフレームがこのDemand Waterfallで、これがB2Bマーケティングのスタンダードになりました。
そして多くのIT企業がこの理論に基づいて様々なツールを開発し、リリースしていったのです。
The Demand Waterfallの遷移の図(出典:SiriusDecisions)
残念なケースから学ぶ、ツール選びの前にやるべきこと
このように欧米の多くのマーケティングソリューションやツールは、こうした体系的な理論をベースに開発されました。ですから我々も本来であればこういった理論やナレッジを体系的にしっかり学ぶ必要があるのです。一方で、自社の何を、どういった価値としてマーケティングを行うのか、あるいは勝てる土俵はどこなのかといった戦略的な部分についても十分議論、定義することも重要です。
ナレッジを身に付け、マーケティング戦略を固め、その施策を実現することが可能な機能を持っているMAツールを選定することが本来の流れです。しかし残念なことに、マーケティングナレッジや戦略がないと、「まずはツールの選定」に走ってしまいます。その結果、オーバースペックで使いこなせず、高価で施策を実現できないツールを導入してしまうことになるのです。
ツールの価格に見合った成果を出せず、結果的に短期間でリプレイスしなければならない(費用、工数が2倍かかる等)という残念なケースをここ数年、数多く見てきました。
この現状が、これから本格的にB2Bマーケに取り組まれる皆様の参考になれば幸いです。