B2Bマーケティングは、ビジネスにおける物流コンテナになる

庭山 一郎 人材育成
B2Bマーケティングは、ビジネスにおける物流コンテナになる

売上をつくるイノベーションこそが、マーケティング!

例えば10億円の売上をつくるとして、既存顧客から合計10億円の注文書をもらうのと、新規顧客を開拓して合計10億円の注文書をもらうのとでは、営業工数が10倍以上かかると言われています。それが業種や商材によっては20倍になることもあります。マーケティングの設計を生業としている私から見れば、「本当に20倍で済むのか?」という思いが正直なところです。
なぜなら、既存顧客に製品やサービスを売るのと新規開拓をするのでは、そのくらい手間も工数もスキルも違ったものが必要になるからです。

問題なのは、多くの日本企業がこの激しい消耗戦を戦えるだけの人的リソースを、そもそも持ち合わせていないことなのです。

そのため、日本企業は新規開拓が得意ではありませんし、新規開拓に近い要素を持つ、既存顧客の他部署や関連会社へのクロスセリング、そしてその進化系であるABM(アカウントベースドマーケティング)も苦手なのです。

「必要は発明の母」港湾労働者とB2B営業の共通点とは?

かつて最も過酷で危険な作業のひとつに、港湾での荷役業務がありました。馬車や貨物列車に比べても圧倒的な量の貨物を輸送できるのは船による物流ですが、貨物の積み降ろしは人間が行っていました。不安定な足場板の上を重い荷物を担いで往復する作業は過酷で危険が伴う作業です。余談ですが、世界中の港湾都市ではこの作業従事者を集めて管理する集団が生まれ、それは後にその国でギャングとなっていきました。日本のそういった団体もルーツをたどると、その多くは港湾荷役労働者の斡旋でした。

現在では、世界の港湾都市で荷物を担いで積み降ろしをする作業者を見ることはありません。荷物はコンテナに小分けされ、クレーンで積み降ろしされています。世界中の埠頭にはコンテナ用のクレーンが並び、気の荒い港湾労働者はもういません。

飛び込み営業や無作為のテレアポコールなど、足と汗と根性で新規顧客を開拓する日本企業の営業の姿は、港湾労働者と同じように消えて行く存在となるでしょう。なぜなら、顧客が情報収集を始めた段階でそれを検知し、アプローチする方法、つまりデマンドジェネレーションというB2Bマーケティングの手法が確立したからです。欧米企業を中心に急速にデマンドジェネレーションを活用した営業活動が進んでいます。

この手法は物流におけるコンテナのように、B2B企業の顧客開拓の風景を一変させつつあります。
その流れに乗り遅れないためにも、多くの日本企業は人的リソースの限界を認識し、足と汗と根性の営業スタイルから早く脱却しなければ、世界との差はますます広がるばかりです。そのためにも、上層部を巻き込んだマーケティング戦略の立案や、デマンドジェネレーションの基盤となるデマンドセンターの構築などを、早急に検討する必要があると考えます。