戦略・戦術の実現を担うMOpsとは

庭山 一郎 CMO
戦略・戦術の実現を担うMOpsとは

MOpsは当初、マーケティングオペレーション(チーム)のことだった

元Marketoの丸井 達郎氏 と廣崎 依久氏 が2023年に「マーケティングオペレーション(MOps)の教科書―専門チームでマーケターの生産性を上げる米国発の新常識」という本を出版したことで日本でも語る人が増えたMOps(Marketing(マーケティング)とOperation(運用)の造語:モップス)。米国では10~15年ほど前から耳にする機会が増えた言葉です。今回はMOpsについて解説します。

B2BマーケティングではMA(Marketing Automation)やCRM(Customer Relationship Management)、BI(Business Intelligence:分析ソリューション)など多くのビジネスアプリケーションやデータを扱います。そしてメール配信やリストメンテナンス、フォームの差し替えなどの作業が発生します。
B2B企業のマーケティングを担うデマンドセンターのなかにこうした作業(オペレーション)を行う人や組織が存在し、その人たちを指してマーケティングオペレーション(チーム)と呼んでいました。つまりその時のMOpsは「マーケティングの実務から戦略や戦術を除いた作業をする人達」という定義でした。

デマンドセンターは戦略・戦術策定の上部組織と、それを実現するためのMOpsの時代に

MOpsがにわかに存在感を強めたのは、マーケティングに使うツールや技術が多様化し、一気にその数が増えたからです。

米国の著名なマーケティングテクノロジー研究家のスコット・ブリンカーが編集している「マーケティングテクノロジーランドスケープ」というマップを見ると、2012年には350だったマーケティングツールが、わずか3年後の2014年には10倍の3,500になっており、2022年ではすでに10,000を超えていると言われています。

この膨大なテクノロジーを自社のマーケティング戦略に合わせて選定し、組み合わせて活用する存在としてオペレーション部隊が注目され、それを改めてMOpsと表現しました。
今では、マーケティングやインサイドセールス、カスタマーサクセスなどに使うツールが多様化し、それらを選定、組み合わせて活用するための専門部隊のレベルがマーケティングの成果を決めるとまで言われています。

エンタープライズB2B企業では、デマンドセンターを戦略や戦術を策定する上部組織と、その実現に向けてテクノロジーを使いこなしていくMOpsとに分ける時代が来たと言えるでしょう。