2024年のB2Bマーケティング 庭山流 プレディクション

戦略 庭山 一郎 組織 IGCサービス
2024年のB2Bマーケティング 庭山流 プレディクション

明けましておめでとうございます。
本年もシンフォニーマーケティングをどうぞよろしくお願いいたします。

2024年、最初のアナリーゼ(コラム)は2024年のB2Bマーケティングがどうなっていくのか、私なりの予測を共有したいと思います。

加速が止まらないB2Bマーケティング市場の2023年を振り返る

2024年の予測の前に、少しだけ2023年のB2Bマーケティングトレンドを振り返りましょう。
2023年は前年の秋から始まったシリコンバレーの景気後退というあまりよくないニュースでの幕開けでした。3月にはシリコンバレー銀行まで倒産し、結果として米国では約10ヶ月で10万人のマーケターが職を失い、CMOの平均在任期間がついに23ヶ月を切るという事態に陥りました。
しかし、結果的にこの事が米国のB2Bマーケティングのテクノロジーや組織の大きな進化を促したのです。

一方、日本ではマーケティングのカンファレンスが劇的に増えた1年でもありました。嬉しいことにB2Bマーケティングに関するカンファレンスも増え、ようやくB2Bにも光が当たってきたのかと感じた年でもありました。
弊社でも初めての本格的なネットワーキングカンファレンス【IGC Harmonics】を8月に2日間の日程で開催しました。この「マーケティングを学び続ける場」、「語り合う場」に多くのB2Bマーケターが集まり、参加者の方々から大変高い評価をいただきました。このカンファレンスは2024年も8月に開催が予定されていますので、お楽しみに。

また2023年は、私と丸山副社長で手分けしてロンドン、ダブリン、デュッセルドルフ、スコッツディール、シドニー、オースティンと世界中を飛び回り、B2Bマーケティングの“今”を直接体感する機会にも恵まれました。コロナと不景気によりマーケティングテクノロジーの進化が激しかった一方で、日本のB2Bマーケティングの遅れが原因で、最先端のテクノロジー企業は日本市場に興味はないという厳しい現実も見せつけられました。

2024年のB2Bマーケティングはどうなる?

ではここからは、本題の2024年の予測に移らせていただきます。

1. テックとクラシックが織り成す2024年

世界中の有識者と話せば話すほど、マーケティングの原理原則は変わっていないのだという実感を得ました。これだけ激動、激変のB2Bマーケティング業界でしたが、本質を突き詰めれば、根底にあるものは何も変わっていないのです。
それは3RRight Person、Right Timing、Right Information)です。
つまり「正しい人に、正しいタイミングで、正しい情報を届ける仕組みを構築し、市場や顧客を創造することで、企業の売上に貢献する」という弊社のマーケティング定義そのものなのです。ツールが増え、進化したのは、それぞれのRを見つけ出すための技術が発展し、その分だけツールが増えただけだったのです。この潮流は2024年もさらに続くと私は見ています。

2. テクノロジーの繁茂を受けて組織も大きな変革期に~MOps から RevOps へ~

10年ほど前から米国でMOps(Marketing Operations)という組織名称を聞くことが増えてきました。しかしこのMOpsは今のMOpsとは異なるミッションでした。当時はその名のごとくオペレーションの専門チームだったのです。
MA(マーケティングオートメーション)を導入すればデータの登録、名寄せ、メール配信、配信リストの生成や配信後のデータメンテナンスなどオペレーショナルな作業が出てきます。これを専門に行うチームがMOpsでした。
しかし、MAに連携して活用するテクノロジーやデータサービスが爆発的に増えた事で、自分たちのマーケティング戦略を実現するにはその中の何を選んで、どう組み合わせるのがベストなのか、という情報収集とそれらの複合的なオペレーションが必要になりました。
つまり、現代のMOpsは単なるオペレーションではなく、もっと技術よりの「情報収集」と「連携操作」に軸足が移り、それによって重要性が飛躍的に上がったのです。

それ以外に、セールス部門が使うテクノロジーも、カスタマーサクセス部門が使うテクノロジーも同様に進化し、その数が増えたことで、それぞれ専門オペレーションチームを抱えることになり、重複作業や無駄が発生してきました。そこでこれらを連携する動きが始まっています。
マーケティング、セールス、カスタマーサクセスの、3つの売上につながる業務を1つにしたRevOps(Revenue Operations)という考え方が主流となりつつあるのです。
現在では、マーケティング、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスの売上に関わる部門すべてを管掌するCRO(Chief Revenue Officer)というポジションを置く企業が増え、これがスタンダードとなるかも知れません。米国では頻繁に組織やポジションの変革が起こりますが、今のところこのCROの活用が実にうまく機能しているように見えます。中には、このCROをAPAC、欧州、北米と各リージョンに置いているグローバル企業も出てきています。
もしかしたら近未来に日本企業でもRevOps という考え方やCROを設定する組織、企業が出てくるかも知れません。

3. 不足する営業リソースを補填するためにいよいよ日本でもPRMが始動

営業リソースの補充や競争力強化の一環として、販売代理店網(販売チャネル)の有効活用戦略であるPRM(Partner Relationship Management)が日本でも注目されるでしょう。
B2B商材の売上の約70%は販売チャネルによって作られていますので、ここの理論武装と強化は必須なのです。

4. AI活用はプロンプトが命

世界で開発、提供されているマーケティングやセールステクノロジーは1万種類を超えていますが、その中でAIを実装していないブランドを探す方が難しいくらいAIは標準になっています。2022年の秋にオープンAIによってリリースされたChatGPTはそれほどの大変革をもたらし、もはやビジネスパーソンがAIを使わない自由度はありません。
しかし、AIがツールであるという点は変わりません。そのAIに良い仕事をさせるためには「プロンプト」と呼ばれる「お願いコメント」の出来が左右します。つまり、AIに優れた仕事をさせようとしたら、使う側にしっかりとしたマーケティングナレッジがないとダメなのです。

5. B2Bマーケティングの原点回帰が始まっている

その理由でマーケティング先進国では原点回帰が始まっています。
欧米のカンファレンスではT・レビットやF・コトラーやレジス・マッケンナなどの言葉が引用され、ドン・ペパーズの著書が取り上げられたりしています。
テクノロジーが進化し、作業が急速にAIの仕事になっていく中で人間が行うべきは戦略であり、状況判断であり、営業や販売代理店とのコミュニケーションなのです。
私はこの流れはとても健全だと考えています。

そして2023年からスタートしたIGCメンバーシップがさらに飛躍します。2020年の創立30周年でスタートしたB2Bマーケティングの研修事業の受講者がすでに1万人を超え、その受講者から「学び続ける環境が欲しい」「ネットワーキング出来る環境が欲しい」というご要望をたくさんいただいた事でスタートした法人会員制の学びの塾です。
ここで、世界の最新情報やテクノロジー関係の情報アップデートも行いますので、皆さまご期待ください!