業績とマーケティングナレッジの関係性

庭山 一郎 儲けの科学
業績とマーケティングナレッジの関係性

ウェイクアップコールとなったリーマン・ショック

リーマン・ショックまでは、我々の顧客の70%以上は外資系企業だったのです。
このリーマン・ショックが日本のB2B企業にとってウェイクアップコールになりました。それまで納品だけをしっかり守っていればよかった企業が取引先に呼ばれ、こう言い渡されたのです。

「これからは自分の餌は自分で探してください」

そんなことを何十年もしてこなかった製造業の驚きは想像を絶するでしょう。上位3社で売り上げの90%という状況で顧客からそんなことを言われれば誰でも「倒産」を思い浮かべるからです。
そして、その時に私の会社を思い出してくれる会社が出てきたのです。

日本と欧米の違い

その違いは、マーケティングを経営の真ん中に据えて、企業文化にも深く織り込んでいることでした。

欧米の製造業では「ファブレス」と呼ばれる工場を持たない経営スタイルがはやっていた頃でした。製造業でありながらオフィスは研究所のようで、「研究開発と生産技術とマーケティングと経営企画だけしかないのです」と説明を受けて驚いたことが何度もありました。設計部門が主催する製品開発会議でもマーケティング用語が普通に飛び交い、販売代理店とのセールス会議でもパイプラインの進捗やマーケティングからの送客の数や質が熱心に議論されていました。

マーケティングに使うツールを選定する場合でも、彼らは自分たちがやるべきマーケティング手法、ターゲットセグメント、ペルソナ、そしてその市場(セグメント)へのアプローチを理解して、それを基準に選びます。本社中枢の人から日本を含む各国のマーケティング担当者までが、「言葉の定義」や戦略や戦術はもちろん、評価や教育方針までの基準がしっかりそろっていました。それは、まるでオーケストラが交響曲を奏でるように見えました。自社のリソースを集中すべき市場を定義し、そこに無駄のないハーモニーでアプローチすることが高収益の源泉だったのです。


出典:儲けの科学 The B2B Marketing 庭山一郎著(日経BP)より