オペレーションで勝って戦略で負けた日本
1979年に出版され、日本でもベストセラーになった『ジャパン・アズ・ナンバーワン (Japan as Number One : Lessons for America)』。
日本企業がちょうど世界市場で快進撃をしていた頃で、日本に見習え、日本企業の秘密を研究しろという大合唱が起こりました。バブル経済とも重なって当時の日本人は有頂天になっていたのです。
しかし、ハーバード大学経営大学院の教授で戦略論の大家マイケル・ポーターだけは、このような表現で日本の弱点を強烈に喝破しました。
「日本企業の強さはオペレーションにある。しかしオペレーションの強化は戦略ではない、日本企業はいつか戦略の欠落によって厳しい状況に追い込まれる」
「今、日本企業はオペレーションの秀逸さで、世界市場で勝っている。それは間違いないが、その勝利によって自分たちはオペレーションだけでなく、経営戦略においても優秀なのではないか、と勘違いしている」
またポーターは、当時、世界の最高峰と言われた日本の「QC(クオリティーコントロール)」品質管理についても「それは経営としては大変立派なことだが、品質管理の向上は戦略とは別のものである」と指摘。日本企業の経営陣が‟オペレーショナルエクセレンス”を戦略的勝利と勘違いしている危険を指摘し続けたのです。
マーケティングがないからプラットフォーム戦略に対抗できない
日本は「ものづくり大国」と呼ばれています。しかし、そのものづくりの情報基盤という市場においては、日本はもう完全な負け組だということはあまり知られていません。
環境や基盤をプラットフォームと言います。
Googleは情報検索のプラットフォームです。Facebookは交流のプラットフォーム、Amazon.comは小売りのプラットフォームです。この例からも、プラットフォームはそのポジションを獲得すると圧倒的な競合優勢性を持ちます。
残念なことに、ものづくり大国である日本は、こうしたプラットフォームを巡る戦いでは蚊帳の外です。その理由は、プラットフォーム戦略は高度なマーケティング戦略の一つであり、マーケティングの基礎的なナレッジや強力なマーケティング組織がなければ、それを理解することすらできないからです。
出典:儲けの科学 The B2B Marketing 庭山一郎著(日経BP)より