導入したMAがメール配信にしか使われない理由

庭山 一郎 儲けの科学
導入したMAがメール配信にしか使われない理由

MAの操作ができることは、マーケティングを実施できることではない

Windowsを搭載したPCを使っている人、つまり大半のビジネスパーソンなら、使っているPCに「Word(ワード)」というワープロソフトが入っているはずです。ほぼ毎日使っているという人も少なくないでしょう。当然、Wordが操作できることと、それを使って人を感動させる文章が書けることは、全く別のスキルであることも理解しているはずです。

しかし、MAにおいてはこの違いが理解されていません。営業部門も、経営層も、時にはマーケティング部門の人でさえも、MAの操作ができることと、それを活用して売り上げに貢献するマーケティングを実施することが、全く別のスキルであるということが分かっていないのです。

MAは〝マーケティングツール〟です。マーケティングのナレッジをしっかり持っていなければ、その機能を使ってマーケティングを実施することはできないのです。

3Sを理解する前のMA導入は、必ず失敗する

日本企業の2万社が一度はMAの導入にチャレンジし、その多くがメール配信機能しか使っていないのですが、実は今、その多くの企業がMAのリプレースを考えています。
その理由は「あまり使っていない」「使いにくい」「機能が足りない」「サポートが悪い」などです。その選定段階でアドバイスを求めて呼ばれることも多いのですが、私はいったん選定作業をとめるように提案します。その理由は、今のままでは同じことを繰り返すことになるからです。

前述のようにMAはツールです。何に使うのか、誰が使うのかを明確にしないと、正しい選定はできません。それを「3S」と言い、「アンゾフマトリクス」のイゴール・アンゾフ博士が提唱しました。これは「戦略:Strategy」「組織:Structure」「システム:Systems」の頭文字をとったモデルです。

この順序でMA導入を考察し、要件を定義して選定すれば、2年や3年でのリプレースはないはずです。しかし、多くの日本企業では戦略も組織もない段階でシステム(MA)だけを導入しています。

その戦略を実現するために必要な要素を抽出して、それぞれの量(人数)と質を定義し、その組織を内製化100%でつくるのか、外部のプロ集団とのハイブリッドで組成するのかを考えながら組織設計を行います。
システムの選定はその後、最後に行うのです。


出典:儲けの科学 The B2B Marketing 庭山一郎著(日経BP)より