営業生産性の正しい向上法

庭山 一郎 儲けの科学
営業生産性の正しい向上法

上げたい営業生産性、その構造とは

弊社へのコンサルティング依頼で最も多いのが「営業生産性を向上させたい」というものです。

日本企業の原価を含むコストの中でも特に大きいのは人件費です。製造、物流、事務などの分野は過去30年で合理化が進み、かなり生産性は高まっていますが、手つかずで残ってしまったのが「フロント」と呼ばれる営業系なのです。

ここを合理化すると、「顧客満足度が下がる」「新規顧客の獲得が止まる」「解約が増える」などの恐怖心があり、また顧客の近くにいる営業部門は社内政治力が強く、メスを入れにくかったという事情もあったのです。
しかし、それももう限界です。何よりも生産性が低いことで給与が上がらない営業部門の中で、優秀な人間から外資系企業へ転職していくという流れができてしまいました。そこまで追い詰められて、ようやく日本企業は営業生産性を意識するようになったのです。

優秀な人が頑張っても、生産性が最低という矛盾

日本企業の営業生産性が低いことについては前からいわれていたことです。

「日本はブルーカラーの生産性と優秀さは世界でも超一流だが、ホワイトカラーの生産性は低過ぎる」

これが世界から見た日本企業でした。しかし、そのホワイトカラーでも突出して生産性が低いのが営業だったのです。その理由は、アンゾフマトリクスにもありました。
日本のほとんどの企業は 「既存×既存」 の象限で商売をしていました。そこは自社が販売している既存製品をよく知っている顧客が、リピートオーダーをかけてくる象限です。つまり守りの象限なのです。日本の営業の業務の中で、顧客との付き合いゴルフや飲み会が異常に多いのはそれが理由です。売り上げ依存度が高過ぎるので、過剰に張り付かざるを得ないのです。

しかし、どんなに頑張ったところで「守り」です。そこに給与が跳ね上がる要素はありません。それが長年続いたことで、日本の営業の給与は先進国では圧倒的に低くなりました。

その結果、日本の大手B2B企業で、優秀な営業系人材の外資系企業への流出が止まりません。高い倍率を突破して新卒で入社し、手厚い研修や先輩からのOJTで育て、5〜10年たってようやく戦力化した頃に外資系企業へ転職してしまう状況に頭を抱えていました。

ではどのように対処して、生産性を向上させればよいのでしょうか?
そのためには、まず分業、そしてシナジーを最大化させることだと考えています。


出典:儲けの科学 The B2B Marketing 庭山一郎著(日経BP)より