日本企業がSTPを行うことができない理由

庭山 一郎 フレームワーク
日本企業がSTPを行うことができない理由

ターゲティングができない・・・その理由とは

マーケティングフレームワークの中で「STP(Segmentation/Targeting/Positioning)」は、最も初歩的で誰もが知っているものでしょう。マーケティングの講義や入門書の最初に出てくるもので、4Pや3Cと並んで最もポピュラーなものです。

しかし、これ程知られたフレームワークを使いこなせている企業は多くありません。なぜなら多くの企業の売れていない製品やサービスは、適切な勝てる市場(ターゲット市場)に乗せてもらっていないからです。 
日本企業の特徴のひとつは取り扱う商材の幅と種類が多いことです。これはメーカーでも卸売りでも同じで、それが製品事業部単位であっても事業部内の人が覚えきれないほどの製品やサービスラインを持っている事が少なくありません。
そうなると企業や事業部の売上げは各製品やサービスの売上げの合計であり、ひとつひとつの商材のSTPをすることの意味が当事者もピンと来ないのです。新規市場を獲得したい、戦略的にこの商材を伸ばしたいという時にようやくターゲティングをしても、適切な勝てる市場を設定することは難しく、競合がひしめく市場に乗せられてしまうことが、珍しくはないのです。

DoV(Definition of Value)STP(Segmentation / Targeting / Positioning)

STPを行う「前」に、必ず実施すべき重要な定義

そこで、我々が今強化しているのは「DoV(価値の定義:Definition of Value)」を議論するセッションです。製品やサービスのスペックでも価格でも、提供形態でもなく、その事業や製品群が顧客に提供する「価値」を定義するのですが、大事な事はここでいう価値とは「顧客にとっての価値」という視点です。

製品やサービスを提供している人は基本的に提供者・当事者という視点しか持てないことが多いですから、自社の製品ばかりを見てターゲットを設定してしまいます。顧客側の視座から自社を見ることは余程のトレーニングが必要になるのです。しかし、自社の事業、製品群を客観的に見ることができる第三者のプロを入れてセッションすることで、社内のものの見方と異なる、多くの学びを得ることが出来ると考えています。

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