CMOのミッションは社内のマーケティング理解度を上げること
私はマーケティング先進国のCMOと日本のCMOとの最も大きな違いは、CEOを含むトップマネジメントチームにマーケティングを理解してもらうミッションの有無だと考えています。実はこのミッションは欧米では必要ありません。経営幹部でマーケティングの重要性を理解していない人など、いないからです。また、多くの経営幹部はMBAを保有しており、概論レベルではあってもマーケティングを学んでいます。
一方、日本のトップマネジメントチームのメンバーはほとんどが営業、財務、技術などの分野から上がってきた人たちで、経営幹部に占めるMBAホルダーの数は、恐らく先進国で最も低いはずです。ですから、日本のCMOはマーケティングに対する理解を得るための努力がどうしても必要になります。
これは、新しくできたマーケティング部門のマネジャーも同じです。その企業にCMOがいなければ、トップマネジメントチームにマーケティングを理解してもらう役割を担わなくてはなりません。
CROへの統合
収益や営業生産性を考えれば、マーケティングとセールスは〝より強い連携〟が求められます。B2Bマーケティングのカンファレンスでも、マーケティングとセールスの溝をどう埋めるのかということが恒例のテーマでした。マーケティングがMQLを創出してもセールスが無視する。セールスが案件を進められず、受注にならない。マーケティングは予算ばかり消費して受注に何の貢献もしていない。これらの〝マーケティング対セールス〟の構図が、B2Bマーケティングの世界共通の課題でもありました。
欧米型の組織では、CMOが主管するマーケティング部門と各事業VPが主幹するセールス部門は指揮命令系統が異なる別組織であり、それぞれのミッションもリポートラインも別でした。
2014年ごろから、エンタープライズB2B企業が採用するマーケティングの主流がABMになってきたことで、マーケティング部門にも、アカウントセールスが守る既存の大口顧客からの売り上げ向上に対する、直接的な貢献が求められるようになりました。これを一つの契機として、マーケティング部門とセールス部門がより緊密に連携するRevOpsと組織的な統合が進み、CROという売り上げに責任を持つポジションが出てきたのです。
この組織ではCMOだけでなく、CSOやセールスVP、CCSOもCROの指揮下に入ります。今までのように直接CEOにリポートするのではなく、リポートラインではCROになります。CEOは売り上げに関することはCRO1人に聞けばよいので、マネジメントが簡素化されます。
出典:儲けの科学 The B2B Marketing 庭山一郎著(日経BP)より
参考コラム
コンダクターとしてのCMOの役割