近年、世界のエンタープライズBtoB企業において「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)」が主流となりつつあります。その理由は、圧倒的な成果をもたらすマーケティング戦略だからです。しかし、日本ではこのABMを正しく理解し、活用できている企業はまだ少数派です。私が新たにABMの解説書を執筆した理由はここにあります。
私は、2016年に国内初のABM専門書『究極のBtoBマーケティングABM』(日経BP社)を出版しました。その後、ABMの進化を目の当たりにしながらも、日本企業はそのポテンシャルを十分に引き出せていない現状に直面しています。
ABMはデマンドジェネレーションの進化形であり、既存顧客、特に大口顧客との関係強化を重視する戦略です。成功するには専門知識と計画が必須ですが、日本ではナレッジ不足から「単なるキャンペーン」と誤解されることも多く、信頼関係を損ねるリスクがあります。
実は日本企業には、ABMで成功するための重要な要素がすでに備わっています。例えば、高い専門性を持つ製品・サービスや、顧客との密接な関係性などです。ただし、それらをABMで活用するためには、正しいナレッジと体系化されたプロセスが欠かせません。そこで本書では、そのための「ナレッジ編」と「実践編」の2部構成で解説することにしました。
第1部の「ナレッジ編」では、ABMの基本的な定義や世界の最新動向、日本企業が成功できる理由を詳しく解説しています。つづいて第2部の「実践編」では、導入までのプロセスを4つのフェーズに分け、事前準備、戦略立案、組織編成、実行・評価の具体的な手法を段階的に解説。特に、チェックリストを用いた準備プロセスや、想定外の問題への対処法、効果測定の指標など、実践に役立つ内容を盛り込んでおきました。
ABMは、時間やリソースが必要な大規模戦略ですが、その分得られる成果も非常に大きいものです。本書を通じて、読者がABMを正しく理解し、自社の成長への一歩を踏み出せることを期待しています。
さあ、この本をガイドに一緒にABMの旅に出かけましょう。