米国のマーケティングカンファレンスに参加して
コロナ禍を経て、ビジネスの世界において様々な変化が見られる中、B2Bマーケティングの世界でも例外ではありません。活発になってきた米国でのリアルなカンファレンスでその変化を確認するため、2023年2月下旬に米国のアリゾナ州スコッツディールで開催されたB2B Marketing Exchangeに当社から、副社長が参加しました。
現地からの第一声は「また米国との差が開きました」というショッキングなものでした。
なぜ、差が開いたのか報告内容をもとに、3つのポイントで紹介します。
1つめのポイントは、AI
米国や欧州で提供されているマーケティングサービスやソリューションには既にChatGPTなどのAIが実装されており、しかもデータ周りやクリエイティブなど広範囲で重要な仕事をさせています。米国のマーケティング系テクノロジーの進化は、景気の後退のたびに大きく進化してきました。これは不景気になると営業が案件に困ることでマーケティングへの期待が高まりますが、それに反してマーケティングからリストラが始まるため、結果的に少人数で良質な案件を数多く供給しなければならず、それを背景に技術が進化するというパターンです。
2つめのポイントは、情報からの隔絶
欧米と日本を含むその他の地域のB2Bマーケティングのレベルの格差が拡がったことで、多くのマーケティングソリューション企業の日本への関心が低くなり、その結果、以前よりも日本に情報が届きにくくなっています。Salesforce.comは本社が米国で上場するはるか以前から日本に法人を作って販売をしていました。Marketoも本社が上場する前に日本に法人を作っていました。
しかし2023年2月に米国で上場したABMのトップランナーであるDemandbaseは未だ日本にオフィスを持っていません。日本に来る計画も日本語ローカライズの準備すらしていないのです。これは今世界を牽引している最先端のマーケティング関連企業全体に共通することで、彼らは、日本市場に興味がなく、日本にはその情報がまったく入ってきません。そういう意味では、すでに日本はガラパゴス化していると言えるでしょう。
3つめのポイントは、「学ぶ事への貪欲さ」
アメリカのB2B企業のマーケターは自分のスキルアップに対する貪欲さがまるで違うのです。それが昨年から続くIT産業のリストラなどの影響でますます貪欲さが増しています。ビジネスパーソンのスキルとは「経験」と「知識」と「ネットワーク」です。そのためカンファレンスに参加して貪欲に知識を吸収し、貪欲にネットワーキングします。そのスキルアップに対する熱量がさらに高まっています。
元来、マーケティング職は、プロフェッショナルが求められる専門職です。包丁一本さらしにまいて、自分の実力だけでのしあがる。そんなマーケターがいることが当たり前の世界です。そういうマインドとスキルと、そのスキルに合わせて設計されたツールを持ったマーケティングチームを抱える米国や西欧州の企業と、我々日本企業は国内市場でも海外市場でも戦っているのが現実なのです。対等に戦えるスキルを早急に身につけなければ、どんなに良い製品を創っても、勝負の土俵にすら乗ることができなくなるでしょう。そうなる前の今はギリギリにいる気がします。
グローバルで戦う必要がある企業も個人も、「もうける科学」である、マーケティングのスキルを早急につけることができるかどうかが問われていくと思います。
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