ロジカルシンキング MECE(相互排他):漏れなく、ダブりなく

庭山 一郎 CMO
ロジカルシンキング MECE(相互排他):漏れなく、ダブりなく

「漏れなく、ダブりなく」分類する。それがMECE

以前のコラムでロジカルシンキングのディメンジョン(Dimension:分類水準)とクライテリア(Criteria:分類基準)について説明したので、今回はMECEについてご紹介します。

MECEとは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字で「相互排他」と訳す場合もありますが、「漏れなく、ダブりなく」分類された状態を指す言葉です。米国の大手コンサルティングファームの一つマッキンゼーグループで開発されたフレームワークで、今では世界中のビジネススクールで教えられています。実はこのMECEをどう読むかで、どの系統のコンサルティング会社であるかがわかると言われた程のメジャーな言葉です。
「MECE」は、昔はとても簡単でしたが、今はとても難しくなった言葉でもあります。

私がマーケティングを学び始めた頃、この言葉で決まって例に出されるのは性別でした。人類は肌の色や目の色に関係なく、男女どちらかにきれいに分けられる。つまり漏れなく、ダブりなく分類できていました。

また、B2Cマーケティングでターゲットの話しをする時に「F2」という表現が出てきます。これは「F2層:Female-2」のことで、女性の35歳から49歳までを指します。レストランやカフェの新業態開発、新ブランドの開発で「ターゲットはF2です」と説明すれば間違えようはありませんでした。

時代の流れにそぐわなくなってきた「MECE」の例

昨今では人類を男女に分けることが難しい時代です。米国や欧州ではカフェやレストランのトイレで「every one」という表記は普通になりました。また、年齢の情報も得にくくなっています。さらに、昔ほど年齢とライフスタイルや趣味嗜好が相関しなくなりました。

米国のマーケターが日本に来て驚いたのは、所得と居住地域が分かれていないことです。米国では、この分野はかなり明確に分かれています。例えば、日本では総資産数十億円の富裕層が普通の住宅街に住んでいます。田園調布と言えば富裕層の住宅地の代表ですが、田園調布がある大田区と言えば、町工場のイメージを持つ人も多いかもしれません。

また、女性を「学生と既婚者と母親と経営者」に分類とした場合を考えてみましょう。経営者で大学院に通っている人は珍しくありませんし、既婚者の学生はいくらでもいるでしょう。もちろん母親も両方に掛かります。しかも「学生でも、既婚者でも、母親でも、経営者でもない」という女性も数多く存在します。つまり「漏れまくり、ダブりまくり」なのです。

正しく分類できることは、ロジカルに考えるうえで、非常に重要なことです。それが「分けることはわかること」と言われるゆえんなのです。

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