マーケターをどう選び、どう育成するのか

庭山 一郎 儲けの科学
マーケターをどう選び、どう育成するのか

マーケティング部門を新設するときの注意点

以前のアナリーゼで説明したイゴール・アンゾフの「3S:【戦略:Strategy】【組織:Structure】【システム:Systems】」が基本であり基準になります。

【戦略】は経営戦略や中期経営計画を実現するために必要な、マーケティング戦略の立案であり、これがすべての基準になります。これは「その戦略は何をするのか?」という設問を繰り返して練り上げていくものです。本当にそのマーケティング戦略が経営戦略の実現可能性を高めるのか、貢献するのか、経済合理性はあるのか、をディスカッションしながら解像度を上げていくしかないでしょう。

戦略、つまり何をするのかが定まったら、それを実現するためにどんな組織が必要かを議論します。今組織があるなら、いったん忘れてないものとして考えるべきかもしれません。現在の組織を頭に置いて議論すると、それが制約条件になります。組織は生き物です。つくった瞬間から自己防衛本能を持ちます。外注や派遣社員でも十分できる仕事を、さも難易度が高いように説明するのはそのせいなのです。

CMOはROMI(Return On Marketing Investment:マーケティング投資回収率)に責任を持ちます。必要のない大部隊を編成すればマーケティング投資が増大しますから、期待されるリターンがどんどん膨らみ、実現可能性はどんどん低下します。外注、派遣、そして正社員というバランスを重視して編成すべきでしょう。

売れない営業をマーケ担当にするとどうなるか

営業とマーケティングは、求められるスキルセットもマインドセットも異なりますから、営業成績が良くなかったからといって、マーケティングの適性がないわけではありません。しかし私は、営業成績が悪かった営業パーソンがマーケティングを希望している場合、転職してマーケティングにチャレンジするようにアドバイスをしています。

その逆に、トップセールスもマーケティングに向いていない人が多いのです。営業成績がトップクラスの人の中には、人間力で売っている人がたくさんいます。声の大きさ、フットワーク、気配りなどで顧客をグリップし、会社でも製品でもなく、その人から買いたいというファンを持っているような人は、マーケティングには向いていません。なぜならこれらの売れている要素はロジカルではないからです。



出典:儲けの科学 The B2B Marketing 庭山一郎著(日経BP)より



参考コラム
マーケティングチームの適性人数とは?